これが私の生きる道『コインロッカーの女』
『コインロッカーの女』 韓国映画/2015年 (原題:チャイナタウン)
!ネタバレあり!
生後すぐ地下鉄のコインロッカー10番に遺棄されたためイリョン(10)と名付けられた少女が仁川チャイナタウンで闇金を営むオンマに文字通り拾われ、彼女を頂点とする疑似家族と共に裏稼業に従事していくクライムサスペンス。
かなり好みの作品でした!
まず主人公イリョンのあの座った目、トッケビのあの子なんですね。
(トッケビは7話辺りで挫折。人間合う合わないはある。)
序盤の借金取り立てシーンも大変勉強になりました。
そしてこの作品の肝というか、作品の世界観そのもののオンマ!!キム・ヘスという韓国の大女優でこの時まで存じ上げなかったんですが、彼女を観られただけでも5億点でした。
もう顔一発の説得力が凄まじい。出てきた瞬間の、ああこの人に逆らったら死ぬな感。顔立ち自体はとても可愛らしいのに、佇まいのドスの効き方が半端ない。声を荒げたりする事は一切ないのに超怖い。凄い。
他のキャストもいい顔揃いでしたね。
長兄ポジのコク、妹ポジの危うさ(応答せよ組)、あとあの知的障害のある彼、あれほんと演技?
元ファミリーで今は独立して闇金やってるコ・ギョンピョも良かったです。
図体はでかいが器が小さいゆえギャンギャン吠える人徳少なめチンピラボス、
推しにはどんどんクソ野郎を演ってほしい願望を満たして頂きました。
中盤、物語の起点となるパク・ボゴムも本人まんまなキラキラ感で説得力ありましたね。
ボゴムとの交流で生まれて初めて人の優しさに触れたイリョンが、もしかしたらその先に何かあるかも(多分絶対無理だけど)と、ほんとにかすかな光が射した直後のあの展開。
オンマの容赦の無さよ。
でもこれがイリョンのいる世界。
そこから一転、哀しき獣ばりの逃亡劇となり、疑似兄弟達が殺しあう展開に。
終盤オンマを殺すため、事務所に帰るイリョン。
飯食いながら待ってるオンマ。(最高)
自身も母殺しをしており、常々役に立たなくなったら捨てると子供たちに言い続けていたオンマが、覚悟を決めたイリョンに全てを譲り身を引いた良いシーンでした。
(ここの場面、観た当初は拉致現場から徒歩で帰るってちょっと無理があるのでは思いましたが、少女時代のシーンと対になっていたんですね。)
エピローグでは家業を引き継いだものの、それまでやっていた臓器売買とは手を切り、
密入国者への偽造書類作成のみに舵を切っていました。
ここ、というか、この作品、衣装がとても良いなと思ったんですが、オンマはだいたいヒョウ柄トップスにどうでもいいパンツ、そして足元はゴツめのトレッキングシューズ(ここ重要!ヒールとか履かん)に対して、新たなボスとなったイリョンは黒のパンツスーツ(このスーツのチョイスも硬派で良かった!)なんですね。
この衣装だけでもイリョンはオンマとは違う道を選んだ事が伝わってきました。
最後、誰もいない事務所で一人オンマを弔うイリョン、彼女は疑似家族は作らず孤独に生きて行くのだろうと思います。
全体的にとてもドライで重い話ですが、一瞬差し込まれたこっそり家族写真を撮影するシーンなどが淡く残る良い映画でした。
大満足!!