中年の苦悩『トイ・ストーリー4』
『トイ・ストーリー4』
2019年/アメリカアニメーション映画
(!ネタバレあり!)
子に「1」を観せようと 思い借りてきたらうっかり「4」まで観てしまいました。(子は5分で興味無し、「2」は飛ばしましたすんません)
中学の頃「1」を劇場で観て影響されまくり、鑑賞後コンビニに置きっ放しにした傘を取りに戻った記憶があります。
「2」はそこまででしたが、「3」ではこのまま死ぬのでは?と思うほど爆泣きしました。
こんな完璧な終わり方があるのかと思っていたので、新作製作の一報を聞いた時は「フォフォフォ、4???!!!!!正気かっっっっっっ??!!!!」と戦慄した次第です。
で、感想ですが、本作は中年のアイデンティティ・クライシス話からの新世界へ旅立ちものでした。
これはもうトム・ハンクスが実写でやってもいいのではという位、なかなか渋めのテーマ。
毎回青空から始まる今シリーズ、今回は土砂降りからスタート。
元の持ち主アンディから新しくモリーに譲られ、新しい仲間達とそこそこ楽しくやってたわけですが、徐々に出番が少なくなり不安に思っていたところに、モリーがゴミから作ったフォーキーがやってくる。
私、このフォーキーがなんかちょっとしんどかったというか、、
フォーキーは自我が芽生えた時から、自分のアイデンティティはゴミなんですよね。だからすぐゴミ箱に戻りたがって。
ゴミ箱が落ち着くって言ってんのに、とにかくウッディが無理やりおもちゃとしてモリーの隣に戻しまくる。
その様子がコメディタッチに描かれてはいますが、なんか、、、辛い、、、、フォーキーは望んでおもちゃになったわけではないから辛い、、、
ここはウッディの自分が忘れられるのではという心理的不安の裏返し行動で、フォーキーはウッディのミラー的存在として必要なんでしょうが、、
1~3でも感じたんですが、ウッディってかなり狂信的なんですよね。
おもちゃの1番の幸せは子供と一緒に遊ぶ事なんだっっ絶対っっっっ!!!!っていう。
(それが裏目に出たのが宇多丸さんがおっしゃるように「2」ですね)
まぁだからこそ、何があってもアンディの元へ帰ったし、主人公たりえたと思うんですけど。
そして話はモリー一家のバケーション!おもちゃもみんな連れてく!もちろんフォーキーがアクシデントによりいなくなる!ウッディが助けに行く!
というお決まりの展開の中、紆余曲折を経てめっちゃたくましくなった元カノ・ボーと再会。
ボー、良かったですね~。どん底を経験しながら、仲間を得て自分の腕で人生を切り開いていく、とても魅力的なキャラになってまして。彼女の気持ちの良い成長がこの中盤をグイグイ引っ張っていってくれました。
というか、今更ピクサー様にこんな事言うのなんですが、ほんと動きが綺麗でナチュラル。。。
背景は言わずもがな、もう、こういう見た目でこういう質感の役者さんが演じてるのかなと思ったくらいですよ。
(今「1」見返すと進歩に驚愕。)
終盤、今回の悪役(そこまで、というか別に悪じゃないけど)に囚われてたフォーキーをいつもの調子でなんやかんやと取り戻したりと、それなりのアドベンチャーはありますが、ん~ここもこれまでほどの興奮はないというか。(新キャラもそんなに。。)
今までだと、おもちゃならではの特性を更にツイストをかけて活かしたりして、そこが楽しかったのですが、、、
仲間達もバズ以外、特に活躍してなかったですし。
なんで、今作はもうそこを見せたかったわけではないのだなと。(いや、ちゃんと一定程度以上には面白いんですけどね)
最後ウッディはこれまでの仲間に別れを告げて、ボー達と新しい世界へ旅立つんですが、
これが自分の生きる道と信じて、命賭けて尽くしてきた会社から諸事情あって転職せざるをえず、そこでも頑張って仕事に邁進するも自分の仕事が少しずつ減っていき、
新卒であんまよく分かってないが才能ある後輩を必死に指導してたら、フリーランスでバリバリ楽しそうにやってる元カノ(やり直せる可能性有り)に
こっちで一緒にやってみないかって言われ、勇気出して新世界に踏み出してみようっつー、そういう話でした。
こりゃ中年の人間の話だよ。笑
あの時バズ達のもとへ戻ったとしても、モリーのクローゼットの中で悶々とする日々が待ってたはずなので、ウッディにとってこれで良かったんだと思います。
価値観の転換というふっとい事を(基本)子供向けの作品にぶっこむ、それがピクサー。
(モリーちゃんがおそらくインド系という人種的多様さも頭が下がるばかり)
(しかし、これをトイストーリー世界観の中で描く必要はあったのか?という疑問と、これまでのしっかりとした流れがあったからすんなりと語れたんだよなという想いがアンビバレントにございます)
ゆえに「3」まで観てほっこりしてる子供達がこれを観て喜ぶかっつったら微妙な気もしますが。笑
(私だったら嘘だろ、、、ってなる)
なんで、そこそこ人生やってきた大人たちが余裕もって鑑賞するタイプの作品なのではと思います。
もうさすがに続きはないよな!!