本当に大変なのは諦めない事『シグナル』
『シグナル』2016年/韓国ドラマ
(ネタバレあり!)
警察のプロファイラー・パク・ヘヨンはある日、15年前の未解決事件を追うイ・ジェハン刑事から、壊れた無線機を通じてその未解決事件の有力な手がかりを教えられる。
時効まであと数日のところでかつてのジェハンの後輩・チャ・スヒョン刑事と共に事件を解決することに成功する。
その後もヘヨンはジェハンと交信を続けていくうちに、彼が過去の人間であることに気付く。一方でスヒョンは、15年前に失踪したジェハンの行方を捜し続けている。(Wikipediaより)
最高ドラマ「ミセン」、超最高ドラマ「マイ・ディア・ミスター」のキム・ウォンソク監督作品との事で鑑賞しました。
とても面白かったです!!!
ミステリーサスペンス+タイムループものですが、双方がバランスを崩す事なく集中して観られました。
しょっぱな心掴まれたのは、主人公同士の最初の通信シーン。
現代側の刑事ヘヨンは初めてだが、過去側の刑事ジェハンにとっては最後の通信であるという作りに痺れました。確かにお互い初めてだったら状況が分からずテンパって終わりだよなと。
そこから第一の事件を解決、チーム結成からの無線で過去と通信する必然性、更に主人公3人の置かれた立場をスムーズに見せるという手際の良さ。
ただでさえ事件ものは複雑なのに、そこにSF要素を加えた上で、こちらを混乱させない製作陣の手腕、最高です。
絶妙なルールが徐々に立ち上がってくるのも良かったですね。
1 無線が繋がる時刻は必ず夜11:23 で通信時間は1〜1分半程度。
(こういう時刻縛り、いいですよね〜大好物です。)
2 現代から過去に直接干渉すると歴史改変は出来るが、新たな被害者が出る。
(これも渋い。現代から犯人教えて未然に万事解決とはならんのです、、。)
3 過去が変わる瞬間、風が吹く。あと、捜査資料の文字や写真がブルブルしながら変わる。
(ここ、風はまぁいいとして、ブルブルはなかなかリスキーではあるなと思いました笑。ただこれは、半信半疑のヘヨンと視聴者へ確実に歴史改変した事実を視覚的に見せる為には有りなのかなと思います。後半はほとんどやらないし。)
4 歴史改変後、以前の記憶は無線通信者以外保持出来ない。
(これは世界線が変わるから仕方ないんですが、終盤になるにつれ、ちょっと切なかったです。みんなの頑張り、誰も覚えてないんだもん。)
そして、タイムトラベル、タイムスリップ、タイムループと色々ありますが、このジャンル、大体考えれば考えるほど、わけわかんなくなるというか、矛盾が出てくるんですね。
あれ?あの時こうだったら、これはどうなるんだ??みたいな。
でもそれはしょうがないんです。
だってそれらは物理的に不可能だから!!!
(宇多丸さんが批評内で大きい声で言ってた気がする)
そして、諸々の矛盾にモヤモヤしたら、かの名作「LOOPER」でのブルース・ウィリスの名台詞、「難しい事はよく分からない」を思い出して下さい。分かんないんですよ!!!
この様な感じで未解決事件を現代と過去とで捜査していくわけですが、やはり何が良いってキャストですわ。過去2作とも自分はキャスティングの完璧さにやられたわけですが今作ももう、、、泣
主人公パク・ヘヨン演じたイ・ジェフン
「ミセン」のチャン・グレ役を蹴ったものの、
これが大ヒットし、今回主人公に登板。
気合い入ってましたね〜。スマートな見た目と最初の世を拗ねた感じがよく出ていました。
んー、これは好みかと思うんですが、個人的にはちょっとオーバーアクトな所もあったかな、、。
勿論上手ではあるので、少し肩の力を抜いた方がより自然なのではと。他の作品は未見なので比べてみたりもしたいですね。
(でも頑張ったよ)
主人公2 チャ・スヒョン演じたキム・ヘス
過去ブログ「コインロッカーの女」でも書きましたが、まじ凄い俳優さんですね、、、。
現在と過去とで20年程の開きがある役柄を両方違和感なく演じていました。
とにかく過去ターンの凄さ。
ご本人は撮影当時40代半ばかと思うのですが、
20代前半のフレッシュさバキバキに出てました。声のトーンや、目の開き方、ちょっとした仕草がちゃんと新米刑事で、、。もともと童顔だったりフェイスラインや体形をずっとシャープに維持している努力もあるのでしょうが、それにしたってこれは演技力以外の何物でもないと思います。
救急車の中で告白してからのギャン泣き、最高でした。(このシーン、救急隊員もしっかり芝居してて偉いぞ!不時着とはえらい違いだ!)
努力する天才(最強)
主人公3 イ・ジェハン演じるチョ・ジヌン
もう実質この人が完全に主役でしょう!!!
ほんっっっっと凄かった!!!!!!
魅力が!!!!!!!!!!!!!!!
自分びっくりしましたわ。
最初出てきた時、え…っ?この人が主要キャスト…??こんなボサっとしたイケオジ感ゼロで…??しかもなんか美女に好かれてるし…え?????
と思ったんですが、、、もう、、、、、
好きすぎる、、、、、
今作の、無線で過去と未来が繋がるという荒唐無稽な設定をこの人の魅力で納得させてくれたというか。
芝居が上手いと言えば、まぁ皆さんそうなんですよ。それを超えるもの、全然まだ言語化出来ないんですが、キャラクターの魅力と役者本人の魅力が完全一致した結果、もの凄く魅力的な人物が爆誕するんですよ。何回魅力って言ってるんでしょうね、だって魅力としか言いようがないんですわ、、、。
こういう人が観たくて、私は映画やドラマを観るんですよね。本当に至福の瞬間です。
(「椿の花咲く頃」のファン・ヨンシクにも同じものを感じました。)
野暮天ジェハンがコーヒーをスヒョンの代わりに持ってくくだり、最高でした、、。泣
魅力がやばい
その他、モブに至るまで本当に素晴らしい布陣でしたね。
憎々しいキム・ボムジュ、葛藤するアン・チス、実は出来るケチョル、ヨーロッパかぶれのホンギ、強行班の刑事たち(スヒョンの恋路にやいのやいの言うシーン、大好き)。
犯人勢もクセ強揃い(たまにイケメン)。
私はインジュ事件の生徒会員の1人が良かったです。めっちゃ腹立つ顔してんすよ。
あともう1点、なるほどと思ったのは、過去シーンの人物を若干縦に伸ばしてるんですよね。
背景までは分からないんですが、初め目の錯覚かPCのバグかと思いきや、どうやら本当らしく。
確かに人間、細いと若く見えるわ笑。
かなりの力技だと思いますが、そのシンプルな工夫も良かったです。
物語は最終局面、2000年に殺されたイ・ジェハンは助かるのか、また現代でアン・チス殺害容疑をかけられたパク・ヘヨンがどうなるのかとう流れになるのですが、それらが解決して大団円とならないのがこの作品。
元々の世界線で死ぬはずだったジェハンはスヒョンの通信により、無事生還。この時点で世界線が変わり、ヘヨンも刑事になっているものの殺害容疑などはなく、割と平穏に勤務しているらしい。が、新世界線でスヒョンと再会すると、こちらでも依然としてジェハンは行方不明になっている。これが最終話の半分くらい。
この時点で、え、、まじ、、、??となっていたんですが、問題のラストですよね。
私は前世界線でジェハンが生還した時、心の底から喜んだんですよ。だのに、また?しかももう時間なさそうだが??と。
最終的に明かされるのは、ジェハンは巨大汚職や収賄の証拠を持っていたため逃亡し、田舎の病院に父の手を借り15年間身を隠していたが、どうやらそれも見つかったらしく、議員の手先のチンピラが病院に押し入るのと同時に、ヘヨンとスヒョンも車で救出に向かうところで終了。
いわゆるオープンエンドってやつだと思いますが、その瞬間はまじで死にそうになりました。
こんなみんな(私も)頑張ってきたのに嘘だろ?と。
せめて、せめてジェハンと再会する所だけでも観せてくれよと。
韓ドラ仲間にLINEも出来ないほど、メッタメタに凹みました。
が!!!!
落ち着いて懸命に考えたところ、やはりこの終わり方に意味があるのかなと。
今作は「未来がどうなるかは分からないが諦めない事」がテーマだと思うので、分からないままに、しかし諦めず終わるのが正解なんだと思います。これ、ずーーーーっと主人公3人がやってきた事ですから。
救出に向かう車内での、スヒョンとヘヨンの対照的な表情が印象的でした。
ラストのラスト、病室で何か決意したように振り向くジェハンは映されるのですが、そこには点滅するあの無線機があります。
そこから察するに、おそらくジェハンは新世界線でも誰かと通信していた。
それにより、今日自分がチンピラに襲われて死ぬ事を知る。
かなりの乱闘が予想されるので、あらかじめここには来るなという旨のメールをスヒョンに送る。
このメールをきっかりにジェハンが助かる新たな世界線に繋がる。(個人的希望)
ではないかと!!!!
だから、あの先には3人の再会が待ってるはず!!!!!!
これが待ってるはず!!!!!泣
ぬるくても甘くてもそう思いたい!!!!
当時かなりシーズン2を望む声があったようですし、製作陣も前向きだったようですが、かなり経っちゃいましたからね、、。私はここで終わりでも納得出来る派です。(作られたら勿論観ます)
といったわけで、鑑賞中も観賞後も全力で楽しめた作品でした!!
ありがとうございましたー!!!!