Yes!Chef!!!「THE BEAR」

「THE BEAR」「THE BEAR partⅡ」

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(邦題:一流シェフのファミリーレストラン)

 

 

ネタバレあり!!!

 

 

(勝手に)信頼している作家兼イラストレーターのぬまがさワタリさんがオススメしていた本作、全く知らなかったのですが観てみまして。

 

傑作でしたッッッ!!!

 

こういう作品が観られるからやはり人生は楽しい。

前知識ゼロで臨んで、後から調べてたらめちゃくちゃアメリカで賞獲ってたんですね。そら獲るわ。

 

主役カーミー役のジェレミー・アレン・ホワイトさん、存じ上げなかったのですが、何と良い役者か。

顔がまず良いですよね。画が持つ持つ。どなたかが若き日のアル・パチーノのようだと仰ってましたが、なるほど確かに。

またあの太い首や二の腕が小柄なのに愛称である「Bear」を連想させるというか。

 

パートナーとなる若きシェフ、シドニーも本当にナチュラルな演技で。才能はあるけど、過去の様々な経験により、時折見せる自信のなさや焦り、怒髪天のその先に行っちゃった時のあの感じなど見事でした。

 

もう皆さん素晴らしいので、全員褒めて周りたいのですが、ちょっとここはリッチーを主に。

 

1の時の彼は本当に見ていてストレスが溜まるというか、いい歳なのに粗野で幼稚でタフな振りしてやることなす事迷惑で空回る、どうしようもない奴で。(ファクとの喧嘩とかよくもあんな下らん事で大騒ぎできるなお前ら)

45歳でこの状態はだいぶ厳しいぞ…と思っていましたが、本作に幾つかある神回の一つ、「リッチー、超名店で修行するの巻」が素晴らしかった…

嫌々研修に行かされたカーミーの古巣で、もちろん初めは怠そうなんだけど、先輩の(彼もいい)「周囲と自分に敬意を払え」という言葉、スーパープロフェッショナル達のスーパー仕事っぷり、合理的に美しく整えられた職場、そしてオーナーシェフテリーとの僅かな、しかしとても豊かな会話。(2はゲストが豪華らしいという事は小耳に挟みましたが、まさかのオリヴィア・コールマン登場という…)

この経験を通して、その後リチャード・ヤーモヴィッチが真のウェイターとして覚醒していく流れは最高でした。

人と関わるのが得意なリッチーはそもそも適性があったとは思うのですが(カーミーもそれが狙いだったわけだし)、学ぶ事の大切さと楽しさが溢れまくっていた回でしたね。

同じように少し前にデンマーク修行へ出たマーカスとルカのあの静かなやり取りも本当に珠玉でした。(あの出てくるだけで不穏なウィル・ポールターがルカ!!ここも最高のサプライズ!!!抑えた渋い演技が素晴らしい!!敵わなかった同期が実はカーミーというオチも良すぎる)

リッチー覚醒編は、おそらく今作一の最恐神回「地獄のクリスマス編」の後だったので、視聴者としてはその構成もとても助かりました。(精神を立て直すのに)

 

で、その「地獄のクリスマス回」ですが、

 

全然方向性は違うけど、ラスアスの3話目を観た時のような、ボリュームも内容も独立した1本の映画のようでしたね。(タイトルもベルツァットだったし)

サラ・ポールソンボブ・オデンカーク、そしてジェイミー・リー・カーティスという…(多分他にもいる、すんません私が知らないだけで)そこに加えて、1でのビッグサプライズ、亡き長兄マイケルことジョン・バーンサル

なんか怪獣映画みたいでした。すごいんだもんな、みんな。それまで厄介者だったリッチーがおとなしかったもん。

1で一瞬ママがちょっとアレなのかな?という台詞が出てきましたが、ここまでとは。

うーん、ここはなんかとても思うところがあって。

あのお母さんの病的な不安定さは医学的なケアが必要な状態だと思うけど、おそらく長年放置したままどんどん悪化しているんでしょう。

もともと気質に起因するかは分からないけれど、おじの話によると夫は生前ビジネスが上手くいかず働き詰めだったので、多分彼女は3人の子供をワンオペで育てたと。3人ワンオペってまじで激務だし、自分の事は全て後回しになると思う。心身共に限界を超えた毎日で、しかも自分を労ってくれる人はいない。(ここでの労りは残念ながら子供からでは与えられないものなのかも)

あの状態は何も良い方向に進まないけれど、彼女は彼女で地獄だよなっていうか、単純に毒親だー!と責められないというか。ジェレミー・リー・カーティスの怪演がそうさせました。

一方で胸を締め付けられのはナタリーですよ。息子達とはレベルの違う激烈な反応をされる娘。ナタリー側に立つと本当にきつい。実の娘にf※※k you!!!!!って… それでも後のオープニングパーティーにお母さん招待するナタリーが、そうなんよだね…子供ってそうなんだよね…泣

まるで太陽のような(しかし実は絶望していた)マイケルの自殺も、自分の気持ちを上手く表現できないカーミーの内気さも、この不安定な環境による所が大きかったのだなと。

ナタリーが夫にピートを選んだのも1では全然理解できなかったんですが、今は凄く納得しかないですね。あんないつ暴発するする分からない爆弾と暮らしていたら、そりゃピートみたいな(多少空気読めなくて若干ダサくとも)絶対不機嫌にならない人と穏やかに過ごしたいって思うわ。

 

印象的なシーンはいくつもあるのですが、カーミーにドタキャンされたシドニーが色々な店を食べ歩く回も好きでした。新メニューの構想の過程が可視化されるシークエンス、素敵でしたねぇ。シドニーの大喰らいっぷりも天晴れ。(デザートにドでかいサンデー食べる所はさすがに胃もたれしましたが…)

 

それに衣装も好みでした。カーミーのジャストサイズ白Tに影響されて即買いに走りましたし。(ユニクロへ)

 

そうそう、肝心のお料理たちなんですが、後半出てくるハイスペ創作メニューがハイスペ過ぎるし食べた事ないしで、果たして美味しそうなのかどうか分からなくなってました笑 シソのジュレとかバニラアイスのキャビアとか庶民には分からんのですわ…。前半のサンドウィッチやナタリーへのオムレツが普通に美味しそうという。

 

全方位好み過ぎる作品なんですが、個人的にはクレア問題はスルー出来なかったっす…

出てきた時から、あっ…なんか…面倒くさい…と思ってしまって…。1から店の面々に思い入れているので、ポッと出が横槍入れんでくれ!今カーミーめっちゃ忙しいんだよ!!っていう…。

この心がざわつく感じ、おそらく本作の素晴らしい製作陣は織り込み済みでしょうね。クレアは店のカオスから距離を置いた存在で、「愛」とか「幸せ」の象徴なのかなぁと。

幼少から、それらを上手く構築出来ない環境にいたカーミーが今後どうしていくのかを3でやるんですかね。

 

っていうか3あるよね?!これで終わらんよね?!!!

 

あ、あと例のクソダサ邦題ですが、この切れ味が魅力の作品に全くキレのないタイトルつけるって逆に凄いなと思うし、視聴者の間口を広げたいんなら、もっと真剣に考えてほしいです。(38師機動隊と同じ所感)

 

とにもかくにも大好きな作品がまた一つ増えた幸せを噛み締めまくりながら3を待とうと思います!(あるよね?作ってくれるよね?)