四半世紀を経た「SLAM DUNK」

往年の名作漫画「SLAM DUNK」を映画化というニュースに耳を疑って約半年、まあ配信でいいかと思っていたら周りから聞こえてくる評判があまりにも高く、これは押さえておくかと観に行ったら、物凄く素晴らしかったという。

 

映画「THE FIRST SLAM DUNK」の感想を書こうと思ったものの、どうしても原作を再読したくなって友人に全巻借りたら、こちらもあまりの素晴らしさに打ちのめされたので、漫画について書きます。

(いや勿論持ってたんだけど、実家の彼方に消えてしまったんですよ)

 

 

当方、スラムダンクリアルタイム世代で毎週ジャンプで読んでましたし、今のアラフォーはだいたい今作でバスケのルールを覚えたと思います。いまだにレイアップは庶民シュートって変換されますし。

 

ただやはり小学生時と現在では見え方の解像度も上がりまして。

 

今回1番印象的だったのは、主人公桜木花道に対してでした。

私、個人的に「主人公」にあまり興味がなくて。主人公って、主人公張るだけに常人とは違うじゃないですか。悟空も幽助も炭治郎もナウシカもゴンも常人には持ち得ない才能と狂気で物事を成し遂げていく。

だからこそ主人公なんですが、私は悟空よりクリリンに、幽助より桑原に、炭治郎より善逸に、ナウシカよりクシャナに、ゴンよりキルアに感情移入してしまう。出来ない事があるから。

 

花道も記憶の中では何となくそういった、狂気じみた主人公カテゴライズだったのですが、

すみません、全然違いましたね。

 

勿論、彼は驚異的な身体能力(しかも超バスケ向き)と自信過剰な性格という、分かりやすいカードを持ってはいますが、めちゃくちゃ地道に努力するし、悩むし、落ち込む。

 

この地道な努力がとても良かったです。井上先生がバスケ経験者である事が最大限生かされているというか。

バスケに限らず、どれだけ素質があっても上達しようと思ったら近道は無い。これをやれば3日で出来るようになるとか無い。

地味でつまらん反復練習を恐ろしいほど長時間費やして、ようやく少しずつ上達するんですよ。ビヨンセも言ってた。基本が大事って。

 

要所要所に挟まれる地道な練習シークエンス、

そして遂にシュート練習に行けたときの、「シュートの練習は楽しかった」というあの囲み。

あれは名シーン。

ああいう気持ちって全ての事の過程にあるんじゃないかな。

 

それとシュート練習2万本終えた後に花道が実感する流川のシュートの凄さ。あれも物凄く真実ですよね。チョロっとかじった位じゃ、物事の本質は分からない。

 

 

 

花道って多分これまであまり生活や家庭環境に恵まれて来なかったと思うんです。

主人公なのに、驚くほど過去エピソードがないのも印象的でした。赤木、三井、小暮の3年チームの豊富さに比べて、花道たった1ヶ所という。(まあ、冒頭の失恋シーンと過去っちゃ過去かもだが)

 

ただその1つだけのエピソードでかなり想像できて。

家は古い木造アパートだし、おそらく父親はあの時亡くなってるし、母親は生きていたとしても近くにはいないんでしょうね。

 

ヤンキーとして大人にきちんとした保護をされず荒れた生活を送っていても、倫理的に大きく外れなかったのは、桜木軍団もとい水戸、大楠、野間、高宮たちがいたからだろうなと思いました。

 

彼らも本当に良い。

彼らの信頼関係、凄く良かったです。どんどん状況が変わっていく花道を嫉妬するでもなく心から応援して一緒に特訓にも付き合う。花道の居場所を奪わないように、悪者にもなってあげる。持つべきものは友達ですわ。(同じ事はミッチーと徳男にも感じました。徳男、お前はいい奴だよ)

 

ちょっと逸れますが、ミッチー殴り込みターン、小学生の時、本気で怖かったです。

鉄男が。

あそこってバトル漫画と違って日常の中の唐突な暴力じゃないですか。学校とか部活とか自分が知ってる世界に現れる暴力。

それをあの画力で描かれるので本当に怖い。

あの時、暴力を振るわれる恐怖、そして暴力を振るう事を全く厭わない人間に対する恐ろしさを知りました。

(鉄男もね、あんだけ身体能力が高いだから環境が違えば別の人生があったはずよ…花道のダークな合わせ鏡ですね…)

 

もう1つ、今回は豊玉編が心に残りました。

それまでのチームにはない悪役感満載のいかにも噛ませ犬な登場でしたが、彼らには彼らの想いがあった。

私の大好物であるところの

「向こうの事情」。

物語に都合の良い悪役には決してしない所が素晴らしい。

自分たちが頑張れば恩師が戻れるかもという、大人からしたら甘々な考えだけど、彼らもまだ高校生なんだよなという。

 

 

山王戦での花道が、リバウンドだけに集中しようとしたあの時、

「こんな風に誰かに必要とされ、期待されるのは初めてだったから…」というあの囲みに大号泣しました。

花道のこれまでの人生の苦難がこれだけで良く分かる。これが必要なんですよ、人は。

過度のプレッシャーで潰れる事もあるかもしれませんが、まずはこれを経験しないと。あなたが必要だと言ってもらわないと。

 

才能ある無いは別にしても、好きな事を見つけ、上達する楽しさを知り、自分を認めてくれる環境。全ての子供をその状況に置きたい!

花道にとって本当に良い出来事だっと思います。

 

ゴリに対する信頼感もいいですね。

初めは反抗していたものの、おそらく生き物として圧倒的に叶わないという動物的勘と、バスケットに対する狂気じみた情熱に感服して、(本人は決して口に出さないだろうけど)尊敬してますよね。

花道にとって、初めて尊敬できる人間だったのではないかな。(褒められるとビックリするのがまた良い)

 

とにかく人間味溢れる魅力的なキャラクターで長く愛されるのがよく分かる、大好きな主人公になりました。

 

他、再読した感想をザクッと。

 

流川は風化した記憶の中ではクールなイメージでしたが、めっちゃキレやすかったですね。

感情が表情に出ないだけか。よく寝るのは覚えてた。

安西先生と矢沢のエピソードがすごく大人。っていうかこのトーンを少年ジャンプで描くって凄い。

リョーちんと花道が仲良くなるターンが大好き。

ミッチーが練習で花道抑え込むところも大好き。ああいうワイワイしたシーンずっと見たい。

当時の推しである小暮くんは今もやっぱり良かった。決めるところで決める男。

すっかり忘れてたけど、青田最高。

 

 

最後に

リアルタイムで読んでいた時は、山王戦が物凄いボリュームで読者としては面白いけど結構ヘトヘトになっていたんです。

だから勝利した時、本当に嬉しかったんですが同時にこれって全国制覇するまで続くのか…?

私の体力持つかなという懸念がよぎった次の瞬間のアレ。

 

衝撃的でした。

何というか、あの流れで世の中の苦さを教えられたというか。大人の階段、登らされました。

 

当時は子供だったので、やっぱり続きが読みたいー!!!!となったんですが、(本誌では1部完という匂わす表記だったし)、今となってはあの余韻がベストなんでしょうね。

 

とはいえ、今回再読した事でめっちゃ想像しますけどね!

花道と流川と関係性とか、主将としてのリョーちんとか(アヤちゃんとどうなるのかとか)、

ミッチーのその後とか、大学生のゴリとか

この先の試合とか!!!

 

同窓会のイラストとか見たい…

 

という夢を抱きつつ、いつかまたちゃんと全巻買います!!!