社会派エンタメとはこの事だ!『CANDYMAN』

『CANDYMAN』アメリカ映画/2021年

 

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シカゴの高級住宅地に引っ越してきた新進気鋭のアーティストのアンソニーと恋人であり画商のブリアンナ。創作活動に行き詰まる中、ある日2人はこの地に伝わる都市伝説を聞く。

 

 

(ネタバレあり!!!)

 

 

 

ジョーダン・ピール製作、脚本という事で鑑賞して参りました!

 

ピール作品に関しては「ゲット・アウト」でぶっ飛ばされ大ファンになった口です。(この流れの人がほとんどだと思いますが。)

 

2作目「アス」も前作には及ばないものの充分楽しみました。こちらはルピタ・ニョンゴがごいすーでしたね。(たまにあのモノマネの練習します。)

 

 

さて、今作ですが、今回もとても楽しめました!!

 

ピール作品は、常に捻りが効いていて、こちらの予想しない展開になっていく心地よさがあります。

ちなみに今作は1992年に作られた「キャンディマン」の続編という立ち位置になってますが、私は何も知らずに観に行きました。(オリジナルがある事すら知らなかったです汗)

 

そこに関しては全く問題なかったですね。というか登場人物と同じ歩調でストーリーに没入出来たと思います。

 

観ていたとしたら嬉しいサプライズが散りばめられているので、それはそれで楽しそうですよ。

 

 

物語は、元々公営住宅のあったカブリーニ・グリーンが舞台。

低所得者層(主に黒人)が住んでいたが、再開発の名目で今や高級コンドミニアムがばんばんぶっ建つように。

 

そこに主人公アンソニーと彼女ブリアンナが越してきたわけですが、このアンソニーが売り出し中のアーティストって設定がまず良かったです。

 

ブリアンナがイケイケのギャラリーに勤めているため、彼女に食わせてもらいつつ、いい感じのエキシビションにぶっ込んでもらえる手筈になってるんですね。

 

ただ行き詰まっていた為、より刺激的なモチーフを求めて地元に伝わる都市伝説を調べ始める。

 

(この1つ目の都市伝説が、オリジナル版主人公のストーリーと重なるのですが、上手い作りだなぁと思いました。)

 

その時、昔からカブリーニ・グリーンに住む老人からキャンディマン伝説を由来(ざっくり言うと無実の黒人男性が警察のザルな捜査により撲殺された)を聞き、作品を描き上げるのですが、この絵が超ひどい笑

 

まじでひどかったです笑笑

 

この時点ではアンソニーって、とにかく売れたい気持ちが先行している割と薄めの作家なんですよね。

 

で、何とかエキシビションでキャンディマン伝説をオシャレインスタレーションにして展示するんですが、批評家に酷評される。

 

ここで第一の惨劇が起こります。

 

クローズ後のギャラリーで嫌味なセクハラオーナーとお手伝い女子大生がヤろうとしてる最中、アンソニーの作品である鏡に向かってキャンディマンて5回言っちゃう。そんで現れてくれるキャンディマン。

 

ホラーの定石をしっかり踏んで、バッチリゴア描写を見せてくれました!(直接的なゴアはここくらい)

 

全国区のニュースになり、自分の名前と作品名が放送されてちょっと喜ぶアンソニー。(あっさ。でも分かるよ。)

(これはチャンスだとばかり更にリサーチしていく最中、何故か蜂に刺されるアンソニー。)

 

しかし、自分の作品を酷評した批評家が手のひら返しでインタビューをしてきたあたりから、おや?となると同時に徐々にキャンディマンに取り込まれていくアンソニー

(ここら辺のアート界への皮肉も嬉しかったですね〜。めっちゃいるんだろうな、こういう奴ら。)

 

そこから第二第三の惨劇とアンソニー自身の崩壊(文字通り身体が崩壊していく。爛れがハニカムという細かい仕事。)が加速し、自分とキャンディマンとの隠された接点を知ることとなります。

(アンソニーは赤子時代、キャンディマンに攫われ生贄にされそうになった所をオリジナル版主人公であり、今回の第一の都市伝説のモンスターとされていたヘレンに救出されていたが、その時点でおそらく次の受け皿として目を付けられていた?)

 

再度、例の老人を訪ね、キャンディマンとはその昔肖像画家だった黒人男性で、裕福な白人女性と恋に落ちたが、女性が妊娠した事がバレると白人のリンチにより惨殺された事を知ります。

右腕を切られ鉤爪を入れられ、胸に蜂蜜を塗られ大量の蜂に刺されるという殺され方。遺体は燃やされ、カブリーニ・グリーンはその遺灰が撒かれた土地。

 

 

 

ここから視点はブリアンナに移り、行方不明になったアンソニーを探し当てると、過去のトラウマによりキャンディマン狂信者になっていた老人に、新たなキャンディマンとして仕立てあげられていました。

(右腕を切られる時に静かに涙するアンソニー泣)

 

ブリアンナは命からがら逃走し、襲ってきた老人を撃退。その時、瀕死でありながら理性が残り、完全に無抵抗のアンソニーを駆けつけた警官が問答無用に射殺。

 

そこからの流れが最高でした。

 

手錠をかけられ(なんでだよ)、パトカーに乗せられ、何の話も聞かず警察側(つまり白人側)に都合のいいストーリーを脅しながら押しつけてくる警官。

 

要求を飲まなければ、でっち上げの罪で刑務所送りをされる事を悟ったブリアンナがキャンディマンと呟き始める。(5回目を警官に言わせる粋!)

 

すると新生キャンディマンとして復活したアンソニーが警官をぶっ殺す!!!!(YES!!!!)

 

ラスト、大量の蜂を纏ったアンソニーから、初代キャンディマンが現れ、ブリアンナに「伝えていけ」と言い残す。(ここは実際オリジナル版のキャンディマンを演じた方だそう!)

 

 

うおー、だいたい書いてしまった。

 

なんか凄く物語自体を語りたくなる作品なんですよね。

 

大概、モンスターvs登場人物になる所を、そうはしない。

キャンディマンは今も新たに生まれ増殖している、なぜなら差別や偏見が無くならないから。

 

痺れるっっっ泣。

 

 

 

ピールはオリジナル版を観て、黒人のモンスターがとても嬉しく、大切にしていたそうです。

 

そこに常に彼が提示する差別、偏見、抑圧に対するドでかい問題意識を本当に見事にミックスしていました。

 

黒人差別に関して、自分はまだ勉強不足できちんと語る言葉を持ち合わせていないのですが、それでも現在もなお頻発する、差別による殺人事件にはいつも胸が潰れる思いでいます。

 

当事者であるピールが、その想いをストレートにではなく、映画内に落とし込んで、しかもそれをエンタメ作品として超絶面白く提示する、その手腕!!!!

 

大満足です!!!!

 

スラッシャーホラーとしてもツイストの効いた演出がありますし(引きの惨劇、鏡の中の蜂、崩れる身体などなど)、意表を突くカット割りなど見所も満点です。ニア監督、いい仕事してますね。

 

観た人とあれやこれや言いたくなるとても良い作品でした!!!

 

ありがとうございましたー!!!!