彼女たちの成長物語『ル・ポールのドラーグレース シーズン13』

『ル・ポールのドラーグレース シーズン13』

アメリカ/2021

(!ネタバレあり!優勝者書いてます!)

 

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当方、ル・ポールのドラーグレースの大ファンでして、今回も祭りにイソイソと参加して参りました。

 

そしてこの度は職場の先輩オススメ視聴方法、「リップシンクの前にアンタックトを自分で挟む」というDIY精神により、100%楽しめました。

 

(ご存知ない方へ 

 当レースは出場者が毎回課題とランウェイをこなし、下位2名が生存権を賭けて

 リップシンクをします。審議の間、ワークルームで待機するクイーンを捉えたのが

 アンタックトという別番組)

 

 

シーズン毎にレースの進め方がじゃっかん異なるのですが、13はいきなりリップシンク

で上位と下位に分け、バチバチさせる作り。

なかなか賛否両論あったようですが、私は全クイーンをゆっくり見られてありがたい

作りでした。(毎回最初の方に敗退したクイーン、全然覚えてないもんで。。)

 

 

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今回頑張った皆さん

 

 

そしてTOP4はこちらのクイーン

 

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ゴットミク キャンデイ ロゼ シモーン

 

序盤、シモーンが飛ばしまくって、こりゃこのまま彼女が獲るなと思ってました。

ランウェイがとにっかくおしゃれ!

ブラックカルチャーへの敬意と誇りに加え、強いメッセージ性もあり、

その上気も効いている。のを、サラッと着こなしちゃう。

ル・ポール師匠のドツボだなと。

 

と思ってたら、途中ちょいちょいつまづくので、あ、これはちょっと分からなく

なってきたぞと。
 

 

ファッション的に最高だったのがゴットミク。

ランウェイが毎回楽しみでした。

メイクも上手だし、すべての課題で常に及第点以上。

スナッチは本当に上手だったし、ルージカルで全力だったのが好印象です)

初のトランス男性クイーンとして間口を広げたのも大きな功績でしょうね。

 

手堅い感じのロゼは、好みのクイーンではないのですが終盤に向けて素を出したのが

良かったです。CM撮影の課題で、以前の批評を自虐としてちゃんと面白く取り入れた

り、映画課題でのザ・クイーンなオーバーリアクションが好きでした。

 

キャンディに関して、最初はまぁ、、、ね笑。

あ、この手のタイプかと思いましたし、タミーシャとの口喧嘩はエンタメとしては

いいけど、近くにいたら厄介だろうな〜と。

ただ、レースが進むにつれ、我が強いのは変わらないものの何だか素直な人だなと

印象が少し変わりました。過剰反応は彼女が生きる上での大事な自己防衛で

周りに対して愛情も持っているタイプでしたね。

母親が刑務所の常連と言ってましたが、ビデオメッセージに登場したお母さんが

まんまOrange is the new blackでなんかよく分からん感銘を受けました。

 

 

最終的に優勝したのはシモーン。

まぁ妥当なとこかな。ルック的にゴットミクも強いと思いましたが、パフォーマンスが

凄く上手なわけではないし。(サーシャばりなら優勝も狙えたはず)

 

 

その他のクイーンもサラッと。

 

カモラは綺麗だけど、レースに出るにはちょっと不器用かな。

ジョーイはあんまり覚えられなかった。。(すまん)

タミーシャにはいいファイト見せてもらいました。(ああいうの見たい)

ララ・リは紙袋が衝撃すぎた笑(アフリカンルックは素敵)

エリオットは興味なかったけど、ララとのリップシンクが凄く良かった。

デナリは顔が好き。(スケートすごい)

ティナはあのリップシンク完全に勝ってたと思うけどな。(終盤を見越して

強者を引かせる展開ある。。。)

ユティカはなー、、、好きじゃない。(寝袋ドレスだけは良かった)

オリヴィアは今一歩強みが薄かった。(陽のパワーはすごかったよ)

 

 

今シーズンはTOP4の成長ぶりが好ましく感じた回でした。

それぞれ得手不得手があって圧倒的強者がいない中、各々批評や触れ合いを経て

徐々に自分の殻や壁を取り払っていく過程が清々しかったです。

 

前回に引き続きコロナ中の撮影の為、リユニオンはリモートでしたが

グランドフィナーレだけでもホールでやってくれて良かった!!!

 

ただ本放送まで出場者も優勝者知らない作りなのはさすがにどうかと。。

ちょっとカタルシスに欠けるよな。。。。

 

 

最後に!

我が推しクイーンを!!!

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圧倒的強者 ビアンカ・デル・リオ

 

S6の覇者で圧倒的強者のビアンカ様。

私、コメディクイーンが大好きなんですわ。

切れのいい返しやテンポの早いやりとりがクイーンの真骨頂だと思ってるんで。

(だからボブやジンクスも好き)

6はメンツも良かったし、ここだけでも布教したい。。。

 

 

14も製作されるようですし、また新たな推しに出会える事を信じて極東島国で

お待ちしております!!!

 

松たか子礼賛ドラマ『大豆田とわ子と3人の元夫』

『大豆田とわ子と3人の元夫』

日本ドラマ/2021

 

(!ネタバレあり!)

(自分がわかりやすいよう、役名ではなく本名を敬称略で記しております)

 

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設計会社社長の大豆田とわ子と3人の元 夫をメインに様々な人間模様を描く

ロマンティックコメディー。

 

 

 

坂元裕二脚本作品との事で鑑賞致しました。

 

坂元作品に関しては、ドラマ「問題のあるレストラン」「カルテット」2作と、著書

「往復書簡 初恋と不倫」を拝見済みで、どれもとても楽しみました。

特に「カルテット」はかなりハマった方だと思います。(テーマ曲が林檎先生ということもあり。)

 

 

で、今作の感想ですが、

 

 

「空虚」

 

 

 

空虚でした。

 

空虚でしたね〜。。。。。

 

 

これまで観た坂元作品から受ける印象は(たった3作ですが)

日々の中のちょっとした違和感を言語化しつつ、

フワッとした「一般常識」とされるものや、無意味な同調圧力から外れてしまった人を真摯さとユーモアを持って掬い上げると同時に不穏さも差し込んでくる、

といった感じ。

 

諸々を言語化する際の台詞回しのクセが坂元節なんだと思いますが、

今回そのクセだけが全面に出てきてしまったような気がします。

 

 

もうまず設定が自分的に無理なんすよ!!!

 

元夫が3人いるのは別にいいんだけど、その夫達が事あるごとにとわ子の自宅に

押しかけてくる。

 

なんで??!!!

 

その未練と行動力が怖いんだよ!!

 

しかも元夫たちはやたらつるんで元妻の私生活に口出してくる。

 

なんかやだ!きもい!!!

 

そんであの異常に物分かりのいい娘はなんなんだ。

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なんなんだよ!!!

 

 

前半はとわ子と元夫+彼らのちょっとした恋路で後半はとわ子の恋路という

作りでしたが、

この前半のそれぞれの恋路はまるで意味わからんかったです。

 

特に岡田将生パート。

岡田が住んでるビジネスホテルの従業員で2年間ずっと挨拶してたのに無視

されてたかなんかで、謎の絡み方してくるあの女。

え?

そりゃ挨拶は返す方がよいが、そうじゃなくて惚れてたんでしょ?

嘘ついて近づいて結局逆ギレってなんだ?

あと実家帰るっつってたけど、最後そこらへんでラッパ吹いてたの何。

 

他、松田パート、角田パートも全く魅力のない恋模様でしたね。

彼女たちは物事をきちんと考えられない人なの?

 

そして、全く現実感のない「変わってる人」こと市川実日子

造形が浅すぎませんか。その程度の描写で変人を押し付けられても、、、

 

 

 

後半、満を持して登場のオダジョー。(韻)

ファンタジーを体現するかのごときキャラ設計。。。

君の感情経路は一体どうなっているのだ。。。。

(過去の経験からだったとしてもあまりの安直な表現では)

 

この時、松の社内でも揉めるんですが、(おそらく)右腕のメアリージュンの

反旗の翻し方とか笑っちゃいました。もうちょいやりようないんかい。

 

松田龍平とのララランドも特にグッと来ず。

(薄れる松田が市川好きだった設定)

 

最後に出てくる、実は亡き松母の想い人だった吹雪ジュンも全然リアリティー

なかったです。

 

 

全体的に登場人物が作り手の都合のために存在するようにしか感じなかったですね。

医大入試の男女差別、ヤングケアラー、LGBTQなどの現代の問題を匂わせたいが

ために配置されていて、彼らが作品内世界で本当に生きているように見えない。

 

フワフワした台詞の応酬も、第四の壁演出も、「それ風」にしか感じられず。

 

そこに加えて、とても素敵な衣装、豪華なセット、人物にピンを合わせた

撮影、有名人のゲスト出演、毎回変わるエンディング映像と、

ルックだけはゴージャスで、なんだか辟易しましたよ。。。

 

 

と、ここまで罵ってきましたが、良い所もありました。

 

市川実日子が死んだ時の病院でのシーン(愁嘆場をやらない粋)

松父とのラストの会話(父の語りのリアルさ)

 

役者さんもメインの方々は素敵でした。

松田龍平の全く気負わない芝居にとても好感持ちましたし、岡田将生はかわいかったし、角田晃広の職人的テンポはさすが。

 

しかし何と言っても松たか子でしょう!!!

 

もうとにかく圧倒的な演技力!!!!!

滲み出てしまう陽のパワー!!!!

人柄っっっ!!!!!!!!!

 

坂元氏が彼女に惚れ込んでいる事がよく伝わってきました。

 

なので、今作は「松たか子礼賛ドラマ」という位置付けでいいのではないでしょうか。

 

ラスト、元夫と松たか子4人でキャイキャイしてる様子がなんだか永遠に抜け出せない

煉獄のように思えて、ドンヨリした次第です。。。

 

というわけで、私にはまっっっっっったくハマりませんでしたが、

楽しんだ方も大勢いらっしゃると思うので、うん、そういうこともあるよねって

感じで散らし終わります!!!!

そして誰もいなくなった『麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜』

『麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜』 原題「月の恋人 歩歩驚心」

韓国ドラマ/2016年

 

(ネタバレあり!!!) 

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恋人と親友の裏切りで絶望したコ・ハジンはとある事故で高麗時代にタイムリープしてしまい、宮中の様々な思惑に巻き込まれていく。

 

 

久々に推しカン・ハヌルを浴びたくて鑑賞しました!

(U-NEXTで観ましたが全20話を30話に分割する手法、まじで冒涜です)

 

タイトルからしてキラッキラなので、少女漫画的ラブコメがあまり得意でない自分は相当覚悟して観たんですが、これラブコメにカテゴライズしちゃ駄目ですね。

(とにかくキラキラで押す日本の戦略、どうかと思いますよ)

中盤以降、なかなかハードな宮中謀略もの(人死にもりもり)なので、騙されて死んだ方は多いのではと思います。

 

解説、考察に関してはこの方のブログが本当に物量熱量ともに素晴らしいので、詳細知りたい方はこちらに飛んで下さいませ。

 

mikanmikan00.hatenablog.com

 

主人公コ・ハジンは湖で溺れた子供を助けようと飛び込んだら、そのまま高麗時代の宮中の皇子たちが使う風呂場にタイムリープしてしまうのですが(当然皇子たちは入浴中というつかみ)、現代人ハジンではなく、へ・スという当時の女性の体の中に魂が入り込むという設定。(スも同時に事故にあい魂のみ死んだ模様)

 

なので、現代人の感覚を残しつつ天真爛漫パワーで花萌ゆりまくり皇子達を魅了していくのが序盤。

(ここ個人的には我慢ターンでした。。すんません、だって恥ずかしいんだもん)

 

初代皇帝が逝去し、正胤(皇太子)が即位するも次期皇位を巡って謀略が派手に動き始める中盤。

(ここから好みのテイストになってきたので本腰入れました。どんどん人が死ぬよ!)

 

そして哀しすぎる終盤。。。

(え、これ序盤と同じ作品、、?)

 

 

意図的にジャンルがスライドしていく作品でしたが、それに合わせて変化していく登場人物たちが非常に魅力的でした。

 

主人公へ・ス(コ・ハジン)

このIU氏、初めて拝見しましたがなんつー上手な役者さんか。。

見た目の小動物っぽさと相反して、さばけた魅力がありました。

序盤のキャッキャウフフターンも彼女がヒロインだから乗り切れたと思います。

台詞の後のちょっとした表情や、完璧なタイミングの涙。すげえ。

オ尚宮との関係性が好きでした。

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そりゃみんな惚れる

 

ウク皇子

もうね、ハヌル祭りでした。

キラキラハヌル、殺陣ハヌル、後悔ハヌル、闇落ちハヌル、策略ハヌル、我に帰りハヌル、髭ハヌル

前半と後半の顔つきの違いとか天才でしかない。

大仰な事は一切していないのに、人が変わる様をはっきりと見せて頂きました。

スとのラストシーンも素晴らしかった。。。泣

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推しが天才という幸福

 

ソ皇子

ウクの恋敵であり、後の皇帝。

この方の顔力も良かったです。お芝居も勿論ですが、この顔あってのこの役だなと。

個人的には寄生獣実写版に出てほしかった。

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顔力

 

ヨ皇子

皇子の中での悪役を序盤から務めてくれたヨさん。

憎まれ役だけど、彼も必死だったんですね。

(私は心の中で英孝ちゃんと呼んでいました)

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英孝ちゃん

 

ム正胤

ずっと命を狙われ続け、結局毒殺されてしまう損な役回りでしたが、なんかビジュアルが良かったです。後に明かされるジモンとの絆に涙。

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レトリバー系皇子

 

ペガ皇子

芸術に秀でたペガ君。彼も悲恋に終始してしまった。。

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いい子でしたな

 

ウォン皇子

なんだか良い所が見当たらなかったこの人。

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美形以外いいとこ無し

 

ウン皇子

唯一彼だけ芝居がちょっと、、、特に前半のぶりっ子感は厳しかったです。

そういうキャラではあるのだけど、もうちょいやりようあったのでは。。

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でも最後頑張ったね

 

ジョン皇子

中盤までまっっっったく興味無かったんですが、終盤でやられました。

スへの気持ちを抑えつつ、ソへの仲介もし、最期も看取り、娘まで育てる。

皇子の中で1番人間的成長を遂げた人物なのではと思います。

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最高の男

他にも

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憎まれ皇后はこうでないと。

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応答せよのコメディ全振りアボジから一転シリアス芝居に泣かされた

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こちらも憎まれ役を全力でこなした偉い人

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なんか個人的に好きでした





 

当初の予想に反して、これでもかって位ドロッドロの権力闘争劇に発展していきましたが、その根底には、親の犠牲になった子、パワーゲームの道具となる女性、身分でのみ判断される処遇など、哀しくて愚かな背景が常にある物語でした。

 

しかも恋愛は全て成就しないという。。。

 

ラスト、現代に戻り、高麗時代の記憶を取り戻したヘジンと、今度はこちらにタイムリープしたソが出会うような甘い展開があるかなと思ったんですが(だってあんな苦労したんだから、なんかちょっと位そういうのあってもいいじゃん!!泣)、

 

なかったっすね。。。。

 

結局歴史を変えられず、愛する人を孤独にしてしまったヘジンが泣きながら謝るという

こっちが死にそうになる鬼結末。

 

と同時に一人スを想って、彼女を探しにいこうと決意するソ。

 

ここで物語は終わり、最後に2人が幸せだった時の様子が流れるのですが、

このもう決して戻れないし完全に終わってしまったけど、確かに幸福な時間は

あったんだというブルーバレンタインエンド。

 

あとは視聴者の皆さんにお任せしますって事なんでしょうけど、、

 

任すなよーっ!!!見せてくれよーっっっ!!!!!

(私はもう会えることはないかなと。。えっ辛い)

 

ヘジンの今後の人生が非常に心配です。。

 

 

 

宮中恋愛がメインでしたが、女性同士男性同士の友情や労わりなどにも

泣かされるとても重層的な作品でした。

 

食わず嫌いせずに観て良かった!!

 

鑑賞後かなりションボリしたので、キャストの仲良し画像などを漁って

心を癒したいと思います!!!泣!!!!

 

初めてのお手本『スペース・スウィーパーズ』

『スペース・スウィーパーズ』2021/韓国映画

(!ネタバレあり!)

 

2092年、地球は砂漠化や土壌の酸素化が進み、人間がほとんど住めなくなっていた。宇宙開発企業UTSは宇宙空間に人類のための新しい居住地を建設するが、選ばれた一部の人間しか住むことが出来ない。

宇宙船「勝利号」は、チャン船長(キム・テリ)や操縦士のテホ(ソン・ジュンギ)を中心に、宇宙に散乱する金目のゴミの掃除に励む日々を送っていた。腕は確かだが、荒っぽい仕事さばきのせいで稼ぎは修理代に消え、借金が嵩んでばかりの貧乏船だ。

ある日、テホが業務中に一人の少女を発見する。その少女は行方不明の子ども型ヒューマノイド「ドロシー」に酷似しており、水素爆弾を内蔵した大量破壊兵器だという。金欠に喘ぐ勝利号の乗組員たちは、ドロシーを使って大金を得ようと危険な取引に乗り出す。(wikipediaより引用)

 

 

「ヴィンチェンツォ」のソン・ジュンギ氏が主演との事で鑑賞致しました。

 

楽しかったですよ!!

 

韓国初のSF映画という触れ込みだったので物見遊山マインドでしたが、完全にヴィジュアルがハリウッドレベルで驚愕!         

これが初て!!!!凄いな、韓国!!!!!

SFは懐具合がダイレクトに画に出がちですが、CG、VFX、美術、衣装など非常に豪華でした。

 

またキャストもメインはほぼ韓国人ですが、国際色豊かな配役。こういう時に気になる言語問題も、同時通訳Bluetoothイヤホンという未来テクノロジーでサクッと解決。

 

ストーリーに関しては、正直100万回観た事あるタイプのものですが、それでいいんですよ。だって初だから!!                          

この奇をてらわない姿勢に私はとても好感も持ちました。

まずは今までの数ある名作を踏まえてしっかり王道をやる。そうしていく内にそのジャンルの体力がつくので、どんどん変化球も生まれてくる。

非常に充実した文化の生まれ方だなと思いました。

 

親子に軸を置いたのも韓国らしくて良かったですね。

 

「勝利号」クルーを演じる4人はもう、実力派安心印の方々でして。

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宇宙はみ出し荒くれ者の皆さん(割と元エリート)

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中の人にしとくには惜しいユ・ヘジン氏

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ヴィランとしてしっかりとしたお芝居をされたリチャード・アーミティッジ

個人的に可愛らしくて華奢な女優さんが演じる無骨なボスってちょっと苦手なんですが、(やっぱリプリーとかフュリオサとか観ちゃうとさ、、)彼女は仕草や口調などで説得力を持たせていたと思います。(てかそれが芝居か。)

 

 

ちょいちょい、ん???って所は無きにしもあらずではありますが(序盤のモタつきや、要素を刈り込めば2時間以内に収まったかも)、これだけ全部乗せしたわりには良く着地していたなと!

 

 

今後も韓国SF映画が作られると思いますが、現状の韓国映画界を考えるともう楽しみでしかないです。

ここに彼の国お得意の容赦ない暴力描写や禍々しさ、絶望演出が加わったらまた新しい世界が観られるのでは!(英語力の高さも利点ですな!!)

 

隣国で脳を散らしながらお待ちしております!!!

 

楽しみだーーー!!!!

 

世の中クズが多過ぎるので『ヴィンチェンツォ』

『ヴィンチェンツォ』韓国ドラマ/2021年

(!!ネタバレあり!!)

 

イタリアンマフィア、カサノファミリーのコンシリエーレ(顧問弁護士)ヴィンチェンツォ・カサノは、雑居ビルの地下に隠された金塊を手に入れるべく、韓国・ソウルに帰国するが、予想外の展開から巨大企業バベル・グループとの闘争に身を投じる事となり、、。

 

 

 

界隈で大盛り上がりのヴィンチェンツォ、完走致しました!

キャスト、衣装、ロケーションがゴージャスで、シリアス、ギャグ、アクション、スリラーてんこ盛りの超高級幕内弁当といった所でしょか。              

主人公ヴィンチェンツォがマフィアの手練手管を武器に、時には法廷で、時には闇でクズ達を成敗する、悪をもって悪を制す系ドラマです。

 

 

ネットをパトロールする限り、割と絶賛一辺倒なところ申し訳ないんですが、個人的には超ドツボ!というわけではなかったです。。

 

勿論一定以上の面白さはあるので、それなりに楽しみましたって所ですかね。

 

 

まずは良い所を!

 

キャスト~!

 

ヴィンチェンツォ演じるソン・ジュンギ氏。

序盤は無表情なシーンが多く腹の中が読めないんですが、どんどん可愛く、そして格好良くなっていきました。笑顔が良すぎ。個人的にはオス度高めの男性が好きなのに、こんなお雛様みてーな殿方に心揺さぶられるとは。世の中何が起こるかわからんな。

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壮絶な美肌

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(平常時の嗜好)

相方ホン・チャヨン演じるチョン・ヨビン氏

クールなお顔立ちで自立した女性を好演。メンチ切った時の説得力が最高。

フィジカルなリアクションもキレがあって良かったです。

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黒幕チャン・ハンソク演じるオク・テギョン

正直ね、この役を死ぬほど上手に演じられる役者さんは他にもいると思うんですよ。ヒャッハー系サイコパスって難しいですし。中盤まではうーん、、と思ってたんですが、終盤悪鬼と化してからは普通に観れました。し、ようあの死に様をやったなと。   

身体造りにも説得力ありましたし、これからに期待!

 

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最期はジグゾウの被害者ばり。頑張った!

 

悪徳弁護士チェ・ミョンヒ演じるキム・ヨジン

このキャスティング最高でした!ここの女性を配置してくれたのがとにかく嬉しいし、上昇志向と支配欲の化け物をとても説得力ある形で演じて下さいました。とにかく飯を食う!あと自宅に洗濯機ないんか?!

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人殺しても食欲旺盛

ハンソクの弟(表向きのバベル代表)チャン・ハンソ演じるクァク・ドンヨン

私はこの方を知れただけでこのドラマを観て良かった、、、泣           

素晴らしい役者さんでした!上手すぎる!上手すぎるー!!!           

愚鈍な御曹司から全視聴者に愛される弟キャラへのメタモルフォーゼ。死なんでくれーと願ったが、彼もそこそこな事やってたからね。。来世では幸せになっておくれ。

 

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全人類の弟代表

 

若き銀行頭取ファン・ミンソク演じるキム・ソンチョル

この人全然メインじゃないっつーか1話だけのゲスト俳優ですが、とても上手だったので。8話の唐突なBL回もこの役者さんの演技力があって成立したのではと思います。微妙な人がやったら全方位に喧嘩売る結果になるけど、彼がこのキャラを魅力的にしてくれたなと。この人も要チェックですわ。

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猫耳

すいません、ここからザクッと。なんたって多いから。

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アン君。黒目がちなコメディ名手。

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事務長。水木しげるタッチ。

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チョ社長。実は武闘派メガネ。

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クムガプラザの必殺仕事人な皆さん

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この人が出てれば一安心。前半の立役者、ホン・ユチャン氏

などなど。1話ごとにゲスト俳優やカメオ出演もあるので、詳しい方なら倍楽しめるのではないでしょうか。

 

鑑賞中1〜3話あたりまでは結構ボンヤリ観ていたんですが、4話のラスト、あのトラックのシーン。あそこは前半の白眉でした。ちゃんと怖い。そこからエンジンかかりましたね。

 

その後、パートナーとなったヴィンチェンツォとチャヨンが大企業バベルとの、やってやられてが繰り広げられるわけですが、そこも結果を先に見せて後から種明かしという絶対楽しいアレがつるべ打ちでした。(色々嬉しい小ネタもね。)

 

暴力描写も怯まずやってて偉いなと。ライターでの指パッチンなど挟みつつ、ラスト、耐性ゼロの人は観れないのではと心配になるくらい超エグい殺し方。

もうこいつらを早くぶっ殺してくれ!!!と思ってたはずなのに、こんな殺され方観ちゃうとそれはそれで引いちゃうという、、、

ここで、ああそうだった、ヴィンチェンツォってゴリゴリのマフィアで、住む世界違う人だったんだと再認識させる強烈なパンチでした。

(この話、ヴィンチェンツォが姫ポジゆえ、彼の可愛さかっこよさに男女問わずみんな惚れちゃうし、うっかりもうこのまま韓国でチャヨンと幸せに暮らしてくれよと思ってたとこでしたからね。)

 

ロマンス要素が最小限だったのも良かったです。                 人としてお互い尊敬し合っている対等な関係性。(私の愛するモルダーとスカリーを彷彿とさせました泣)

 

ラスト、人目を忍んで会えるの年一という不時着エンドでしたが(一日!短っ!)、住む世界違いすぎるし、それがベストかな。(あ、でもお互いが引退したらマルタ島で会ってほしいかも。)

 

 

 

ツボじゃなかった所は主にコメディ演出ですね。。。               ちょっとくどかったかな。。。

 

クムガプラザの面々がギャグパート担当でしたが、あまり好みではなく。即物的な笑いに感じてしまって、もうちょっとシチュエーションやシンプルな間で作ってほしかったです。占い師を拉致したシーンの流れくらいが好きでした。           (そう思うと不時着の人民班長力は凄かったなと。彼女の笑いは発明だと思います。)

 

その中ではアン君が断トツに光ってましたね。                  あと、坊さんたちの「コングラチェレーション 伴奏/木魚」は笑いました。

 

フィクションラインはかなり低めな作りではありますが(そもそも血縁とかをめっちゃ重要視してそうなイタリアマフィアでアジア人がコンシリエーレになっちゃう世界ですから)、プラザ住人が全員必殺技あるのが、、まぁアガるはアガるんですが、うーん、、だったらもうちょい体型などの説得力が欲しかった、、、特に重量挙げの彼女。腕が細い。。。あと妊娠初期は無理しちゃダメよ。。。。

 

他にも、え、金塊ちょっとでいいからみんなにあげなよとか、命を助けてもらったソクドを店でこき使うってどういう事?とか、インザーギどこ行った?とか、細い事はちょいちょいありますが、それは全部置いといて、どうしても1箇所だけ!!

ヴィンチェンツォのお母さんが殺された時、駆けつけた彼が顔にかけられた白布をとらないんですよね。                               確認しません?!顔!いくら床に2人の写真が落ちてるとはいえ、一応確認するのが人情でしょう!しかもあの時はオンマって言うつもりだったのに!泣

あそこはちょっと違和感ありましたね。。

 

とまぁ、結構イチャモンつけちゃいましたが、全体的には痛快でしたし、良い役者さんも知れて満足しております!!!

 

みんな身体に気をつけて頑張ってね!!!!

見た目はおもしろ、中身は虚無『シャザム!』

『シャザム!』(原題:Shazam!)

2019/アメリカ映画

 

(!ネタバレあり!)

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幼い頃、母親と生き別れ里親を転々とするビリー・バットソンはある日魔術師からスーパーパワーを授けられ、「シャザム!」と叫ぶと大人のヒーローに変身出来るようになる。

 

 

 

 

休日の夜に軽く映画でも思いアマプラにて鑑賞しました。

 

 

 

 

シンプルにつまらなかったです。

 

 

別にこちらも、よし!大傑作とおぼしき作品を観てやるぞ!と意気込んでいたわけではないのですが、ちょっと予想を遥かに上回るつまらなさでした。

 

おい、DCまじで大丈夫か?

 

 

冒頭、70年代、とある少年(後のヴィラン)が父兄と祖父家へ車で向かう途中、魔術師に呼ばれ「純粋な心を持つものにパワーを授けうんたらかんたら」と言われるものの、横にあった魔物封印ボールに気をとられ不合格。(家族の爪弾きものだったこともあり、その後こじらせる)

 

現在、都会で母親探しながら、たくましくっぽく生きる主人公ビリーは新たな里親に迎えられ、他5人の里子と共に共同生活を始める。

そのうちの一人、小柄で脚が悪く学校でいじめられてるが口の達者なフレディと相部屋になり、なんだかんだ一緒に行動する。

 

ある日、なんか知らんがビリーはずっと勇者を探してたあの魔術師に召喚され、パワーを伝授、シャザムと叫ぶとアラフォーくらいの男性ヒーローに変身出来るようになる。

 

フレディとスーパーパワーではしゃぐ。ネットにアップする。話題になる。

 

一方おじさんになったヴィラン(サド?だっけか?)は、長年の研究の末、魔術師のところに辿り着き、魔物を自分に取り込んで(なんで魔術師死んだんだっけ)父兄その他をぶっ殺し、完璧なパワーを求めてビリー探す。

 

ビリー見つかって危機一髪。逃げる。

 

里子の一人がビリーの生き別れた母親見つけて会いに行くが、一緒に住む感じじゃなくてすぐ諦める。

 

その間、家がヴィランに見つかって、あーだこーだあって、最後里子全員スーパーヒーローになって、ヴィランも捕まえる。

 

です。

 

 

 

 

今作、基本コメディなんですが、

 

・テンポが悪い

・ギャグが滑る

・キャラが書割

 

この3点かと。

 

 

もうプロローグの時点で、あっ、、、、って感じましたもん。

少年が召喚された洞窟は安いし、彼が純粋そうな描写もないし、帰されてから乗ってた車にトラックが追突するんですが、車が止まってから追突されるんですよ。

いや、走行中にされろよ。

この、間の悪さが最後まで続く感じです。

 

 

 

キャラクターも特に魅力がなく。

 

主人公は里親を転々としながら、行方不明の母親との再会を夢見てる少年ですが、ちょっと荒れてるけど頭キレるとか、野生で磨いた腕っ節が素敵とか別にない。

普通にしか見えない。(最初のパトカーうんぬんだけじゃ弱いでしょ)

なんでヒーローに選ばれたのかわからん。(一生懸命母親を探してたから?フレディをちょっと助けたから?それくらいは庶民もするよ?)

 

里子仲間もオーソドックスなキャラ造形で、オモシロイっぽい台詞を一人ずつ喋ってるだけ。

(紹介シーンの掛け合い無し感にげんなり。)

 

 

唯一、非常にキャラがたって(といってもよくある感じだが)、役者本人のポテンシャルでコメディリリーフ、フレディを好演していたジャック・ディラン・グレイザー。

あのITで、病気がちな子を演じていた彼です!

私、ITでは彼が1番好きでした!

こんなザルな脚本演出でも、きっちり一定以上の仕事をするこの方は末長く活躍されるんじゃないでしょうか。

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一人だけ群を抜く芝居をされたグレイザー氏。

 

そういう意味で、こじらせ中年ヴィランを演じたマーク・ストロングにも救われたかなと。

この方も大好きな役者さんです。

(このサドに関しては、長年あの洞窟へ行く方法探してた割に、解決方がめっちゃ簡単だったけど?!お前、阿呆か?!!)

 

こういった、どんなレベルの作品でもきちんと存在感やリアリティを持って演じられる俳優さんってほんと尊敬します。

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スッキリとしたヘアースタイルが魅力のストロング氏。

 

 

 

 

ギャグもね、それじゃ笑えないというか。

コメディって本人たちは至って真剣な上で噛み合わない状況が笑いを誘うんだと思うのですが、本作は笑わせるための台詞や演出なんですよ。

それだと萎えるんです。

(最後の方で、大人姿のヒーローとなった末っ子ダーラが職業サンタに向かって、「私はすごくいい子よ」とこっそり言ってサンタが困惑するシーンが1番正解に近いのでは)

 

 

 

そしてストーリーのテーマの一つは「家族とは」なんでしょうけど、そこも、、、

 

 

ヴィランは幼少期から実の父兄に馬鹿にされ続け、愛を得られずに闇落ち。

かたや主人公も実の母に再会したら捨てられた事が判明し、新たな家族と真の絆を結ぶ。的な。

 

この母問題ですけど、まず祭りで迷子になったくらいで生き別れるか?(「国際市場で逢いましょう」観た事ある?)赤子のときならまだしも結構喋れてたじゃん。

しかも同じ街に住んでたっていう。

で会ったら会ったで、めちゃくちゃ物分かり良く引き下がる。彼、思春期ですよ?じゃなくてもこんなん絶望するでしょ。

人間描く気あんの?これ、ヒーロー誕生譚でしょ?

 

里子たちとの関係も、フレディは置いておくとして、他の奴らと殆ど絡んでないよね。

あの母探しノートとハッキングで全部回収したつもりだろうけど、だったら彼らも初めからヒーローはしゃぎに巻き込む方がまだましでは。いつ絆育んだの?

一緒に住んでる設定のメリットゼロですわ。

 

 

他にも、魔術師が無能すぎるし(もっと精査しろよ!)、ジョックスは華無いし、トラの人形を出してくるのとかどうでも良いし、無駄になげーし、、、

(正直、テンポが良くて笑えれば、物語上の矛盾とか詰めの甘さって勢いで押し切れたりすると思うんですが、本作はとにかくそこが壊滅的だった。。)

 

 

こりゃあ、マーベルに水を開けられるわけだよ。。。

 

DCヒーローものはノーランのバットマンくらいしか観てないんで、これから観ようかなと思ってたんですが、めちゃくちゃ出鼻を挫かれましたわ。。。

 

なんか続編作る気っぽいですが(里子ヒーロー達が活躍するんでしょ)、こんなんだったらもう観ないす。

 

 

というわけで、久々に白ける映画を観ましたが、これはこれで勉強になったような気がするので鑑賞自体は良かったようなことにしたい気がします!!!(せっかく休日の時間使ったんだしな!!!!)

 

 

私は彼女に謝りたい『かぐや姫の物語』

かぐや姫の物語

2013年/日本アニメーション映画

 

(!ネタバレあり!)

 

自分ジブリで育ってきたものの、基本駿一辺倒で勲はスルーしがちだったため今作未見でしたが、友人から散々観ろ観ろと言われ鑑賞致しました。

 

 

 

空恐ろしい作品でした。。。

 

 

まず各所で絶賛のアニメーション技術ですが、なるほど、ちょっとどうかしてる域でしたね。

人間って絵をあんな風に動かせるのかと。なんというか、生きとし生けるものそのものの動きというか。

赤子の頭が少し跳ねたり、物を拾う動作の入れ込み方だったり、首のかしげ方だったり、桜の花びらの舞い方だったりと、それを、あのデフォルメされた人体造形と手書き線でやられるもんだから、自分が一体今何を観てるのかよく分からなくなってました。

往来を行き交うモブにまで徹底されている凄まじさ。

凄いを超えて戦慄覚えまくりでした。

 

背景の水彩画も神でしたね。

水彩って画材の性質上、試行錯誤できる猶予が極端に少ないので、正解が見えた上で一発で色や形を決めなくてはならず非常に難しい技法だと思うのですが、素晴らしいお手本を見せて頂きました。

色を重ねた部分と単色使いであんな豊かな世界が描けるのかと、その向こうに見える鍛錬に絵描きの末席にいるものとして頭が下がるばかりです。

 

 

ストーリーはよく知られている竹取物語ですが、そういや私、幼少の頃よくわからん話だなと思った覚えがあります。(絵本で読む古典レベルのものですが)

 

竹から生まれて、美人に育って求婚されたら全部断って、だって月に帰りてぇからっつって悲しむジジババ置いて帰るってどういう事?

じゃなんで地球の竹林に来たん?結局何がしたかったんだよ、何の話だよと。

 

 

 

 

答えて頂きました。

いやー答えて頂きました。

 

 

そういう事でしたか。

 

 

駿がロマンチストなら、勲はリアリスト。しかも徹底かつ辛辣なリアリスト。

ニコニコしながら横っ面引っ叩かれるような感覚でした。

 

 

 

月に住まう殿上人には悲しみはないが喜びもなく(おそらく不死だし)、地球の生命の営みに想いを馳せる事はタブー。

その禁忌を犯してしまった罪に対する罰として、地球の竹林に降ろされたのがかぐや姫

 

そんなに憧れるならそっちで一回やってこい、どうせ結局こっちに戻ってくるがな(月の神談)

 

 

登場人物はほぼ原作通りですが、これといった悪人がいないのが切ないところ。

 

 

竹林でかぐや姫を見つけた翁(おきな)。この翁の決めた都移住が最初の間違いなわけですが、大事な我が子に何不自由無い安全な暮らしをさせたいと願う親心はよく分かります。

田舎で質素に暮らしていたものの、ある日ごつい宝くじ当てちゃって、これで都会に行ってデッカい戸建建てて、娘にハイレベルな教育を受けさせよう!

それが娘にとっても1番なのだ!と思い込むのは実に賢明ではないけど邪悪でもない。

ただそこに自分の欲も乗っちゃった。

ここの宝くじは、またも竹から見つかる金や反物ですが、これ月側が毎回仕込むトラップなんでしょうね。

 

心優しい嫗(おうな)もとても娘想いだが、都行きを止められず。というか最終的な決定権は当然夫側にある時代でしょう。

(ただ、竹から産まれて猫スピードで育つ女児を、そんな事もあるかとスルッと受け入れる柔軟性は見習いたいす)

 

 

前半の田舎シークエンスの輝きっぷりは、こっちがうっかり移住したくなるくらい素晴らしくって、この話をずっと観ていたかったです。

あの畑から盗んだ瓜みたいの食いたい。

ここで捨丸なるオリジナルキャラが出てきますが、これは後述します。

 

 

 

中盤、有無を言わさず都の御殿に連れてこられたかぐや姫。(雉鍋食べさせてあげたかった、、っ泣)

広い屋敷ではしゃいじゃうのが良かったです。まだ子供なんだよね。

 

教育係もめっちゃ手を焼くスーパーお転婆ガールだったものの、(ただ親の前ではしっかりこなす。喜んでもらいたいし安心させたいからね。)お披露目パーティーでメタメタに傷付けられてしまう。

 

この宴、まじ醜悪でした。。。低俗で下品な大人達がわんさか出てきて、しかもこういう会って絶賛現在進行中じゃないですか。

地位の高い人間ほど、虚無なパーティーやってますもんね。。

 

怒り、絶望するかぐや姫の疾走感を物凄い筆力で描き、そこから故郷で炭焼きとの静かな対話。

春を待つ木々に自分を重ねて行き倒れてしまう、、ってほんと子供にこんな思いをさせないでくれ!!

 

 

 

月パワーで屋敷に戻ってからは故郷に帰る日を夢見てじっと耐える日々ですが、ここから求婚ターン。

 

 

この公達達も馬鹿だけど悪人ってわけではないんですよね。そういう価値観で生きてきちゃってるし。

(ここらへんの人物の所作も面白かったです。あの尻尾みたいな帯?ってああするんだ)

 

お馴染みの無茶振りからの嘘ばれなど、割とコメディターンだと思うですが、そこで人死にが出たりと結構エグい。

ちょっとぶつかった子供の親に平伏されたり、輩になった捨丸を偶然見ちゃったりと、心折れまくる展開。

 

序盤からそうでしたが、もうこの辺りの翁が無理過ぎて。

あなたの為を思って棒を振りかざしてくる親って子供はほんとにしんどいんすよ!!!分かって!!!全ての親!!!!(自戒)

 

 

そんで帝ですよね。

もう造形の悪意。笑 

顎、そして肩パット。

 

 

あの後ろからガバッと来られた時の姫の生理的嫌悪顔。秀逸です。

 

この帝がキモすぎるのがとても重要ですもんね。心からもう嫌だと、こんな所(地球)になんかいたくないと思わせないとなので。

 

 

嫗の計らいで故郷に向かった姫が再会した捨丸。

やっと会えた捨丸!美しい故郷を体現していた捨丸!

だのに、、、

この捨丸がまた、、、

なんか愚か、、、

あんなに頼れた捨丸兄さんはどこへ、、、、

(一緒に逃げようじゃねーよ、妻子どうすんだお前、なに即答してんだよ)

高良健吾の少しおぼつかない発声も相まって、飛翔というとても爽快でありながら非常にゲンナリもするというアンビバレントな名シーンでした。

 

 

 

 

終盤、ついにお迎えに来てしまった月一行。

あっかるーい軽快ミュージックにパステルカラーで、はい!お前ら愚かな人間の苦悩とか哀しみとかまじどうでもいいんで!!

という全く話の通じない別次元感。

かぐや姫のスーッというあの動き、黒沢清ホラー幽霊みたいでした。

別れの際、若干の猶予があるものの途中でぶった切られる。(あそこ無くてもいい位でしたね)

 

 

羽衣を掛けられ、全ての記憶を失い(彼女にとっての)煉獄に戻されるかぐや姫があの童歌と共に地球を振り返って涙を流し、月に赤子が映って了。

 

 

私のこの月赤子を観た瞬間は、どういう感慨を抱けっちゅーねん!!!!死ぬ!!!!(爆)となったんですが、

よく考えるとこれがこの辛辣過ぎる物語のわずかな希望なのかなと。

 

 

おそらくこれからも地球に憧れる月人は現れ、何回も行われた地降ろしが続くはずで、多分前回今回同様失敗に終わるだろうけど、いつか、もしかしたら誰かが人生を全う出来る日が来るのではないか、、というかすかな希望。

(でも人間が愚かな限り、その日は永遠に来ないけどね。バッチーーーン!!!)

 

 

 

生命の輝きに焦がれて人の業に潰されたかぐや姫の物語

 

 

漫画版ナウシカでは、その人ですら美しい生命そのものなのだと結論付けましたが、こちらでは徹底して突き放す。

 

なんというか、心底ごめんなさいという気持ちになりました。。。ごめんね、かぐや姫。。。俺たち、頑張ってもっと賢くなるよ。。。。

 

 

 

なんやかんや打ちのめされはしましたが、しかし自分の人生の財産となる大事な作品を鑑賞できましたと思います。

高畑監督、ありがとうございました!!!!!