ハッタリとはこうカマす『38師機動隊』

『38師機動隊』(邦題:元彼は天才詐欺師❤️)韓国ドラマ/2016年

!!!ネタバレあり!!!!

 

 

韓国ソウォン市市役所の税金徴収課でうだつの上がらない日々を送るペク・ソンイル課長(マ・ドンソク)はある日なけなしの貯金で個人売買サイトの中古車の購入を決めるが、、

一方、出所したばかりの青年ヤン・ジョンド(ソ・イングク)はある計画を秘めており、、

 

 

もう最っっっっっ高でした!!!

こういうのが観たかった!!!!!

 

良い脚本、良い演出、良い役者が揃うとこうなるのだというお手本のような作品です。

(邦題のアレさは、もうすでにたくさんの方がキレ散らかしてらっしゃったので省きますね。)

 

国民の義務である納税、しかし富裕層であればある程、特権に守られて超高額な滞納を見逃されている。

ここに切れた税金徴収課の主人公が、とあるきっかけで天才詐欺師とタッグを組み「詐欺」を仕掛けて税金を徴収していくストーリー。

 

「詐欺」はするものの、目的が滞納している税金徴収という1点の曇りもない公明正大さなので、こちらとしても全く心痛まず非常に痛快なんですね。

 

そしてこの手の話の場合、いかに相手を嵌めるかが肝ですが、ここがとても分かりやすい。

一度全体の流れを見せた後、さかのぼって実はこういう事でしたとネタばらしをする作りですが、ピタっとパズルがはまっていく気持ち良さがちゃんとあります。

(下手な作品だと、今何やってんだっけ?え、いきなりでてきたこいつ誰?の連発なんですよね。。)

 

またざっくり3章に分かれているのですが、ここも

小ボス→の上にいる中ボス→の上にいるラスボス、と単純明解です。

 

だんだん敵が強くなっていくごとに絡む人数や思惑も増えてきますが、大丈夫、観てれば分かる。(名前だけはしっかり覚えておいた方がいいけど)

 

また、伏線の回収の仕方も見事です。

鑑賞中、あれ?あそこってもうスルーしちゃったのかなと感じる箇所がいくつかあるんですが、のちのちきっちり拾ってくれる。最高。

(序盤で逮捕されたはずのジョンドが送検前に一刑事の判断であっさり釈放された時、そんなぬるい事あるか?って思ってたので、あそこは嬉しかったですね。)

 

ロマンス要素がほとんど無かったのも良しです。

こんな大変な事してるんだから恋愛なんてしてる暇ないんだよ!

 

 

そんで役者陣!!!

 

しょぼい公務員ペク・ソンイル役に、マブリーの愛称で知られるマ・ドンソクを据えた時点でもう勝ちでしょう。

マブリーが走る!マブリーが困る!マブリーが焦る!マブリーが照れる!マブリーがキメる!

どうしてそんなに可愛いのか、マブリーよ。

ガタイはでかいが気は小さい。(なんなら喧嘩も弱い)でもとっても真面目だからどんどん詐欺の勉強して、最後は立派な詐欺師になっちゃう。

 

そして我々が大好きなあれ。

 

「滞納総額⚪︎⚪︎ウォンを、、、完納されました。」

 

かつてここまで地味な決め台詞があったであろうか。

 

この決め台詞を言うバリエーションも良かったですね~。最初はブチ上げ、次はキメた後に急展開、そして最後は静かに、、、(泣)

 

 

次にソンイルとバディになる天才詐欺師ヤン・ジョンド役のソ・イングク

本当に華のある役者さんですね。見栄えがいいのはもちろんの事、フィクショナルになりやすい「天才詐欺師」を見事に体現していました。あの腹の底が見えない笑顔、最高っす。

詐欺の過程で別人になりすます時も、たいして変装していないのに口調や仕草でちゃんとその人に見える、これが芝居だ!

 

 

この2人を中心とした詐欺チームの面々ももう大好きですよ。

「花」担当のミジュ、「飛ばし」担当のハクチュ、「キーボード」担当のジャワン、「財布」担当のノ先生。

まぁ始めは各々裏の担当がありますが、みんな普通に演者としてめっちゃ前に出てきます笑。めっちゃ芝居カマします。

 

その他、メインから脇に至るまで本っ当にいいツラが揃ってましたね~。(にわかの私ですら知った顔がちらほら。不時着チョルガンのちょい悪善人ぷりや、新しき世界のあの人の出落ち感にホッコリ)

こういうクセ強ジジイ達が観たいんですよ、こっちは。イケメンは1人で良い。

 

なんつっても敵キャラのツラですよね。上に行けば行くほど、冴えねぇジジイなんです。でもきっと現実ってこうだなと。日本にもあんなんたくさんいます。

 

 

 

このドラマ、序盤から中盤まではどんどん飛ばして華麗に騙すのでとても楽しいのですが、それ以降はかなり苦戦を強いられ悔しい展開が多くなってきます。

そして最終的に(序盤に比べると)かなり静かな決着を見ます。もしかしたらそこに食い足らなさを感じる方がいるかもなんですが、私はあれでいいと思ってます。

 

まず、ラスボスであるチェ会長が強すぎる事を示す為にはスムーズに事が運んじゃダメ。

そしてチェ会長を倒すという事は同時に、ソンイルの先輩であり、部下ソンヒの父であるチョン市長の失脚と同義なんです。

だからどうしても苦くなる。(あの市長、とても味わい深かったですね。市民のためと正義に燃えていたのにたった1度の便宜で永遠に身動きがとれなくなり、取り返しのつかない罪を犯してしまった哀しさ)

 

また、ジョンドの身の振り方も良かったです。

最後の詐欺を事件として立証するために自らが犠牲となって自首をする。

よく、ここまででかい事やったのに、なんかのスーパーパワーで無罪放免になって大手を振ってシャバで暮らすみたいな結末もありますけど、決してそうはしなかった、そこに製作陣の矜持を感じました。

(それやったら特権に守られているあいつらと同じになってしまうという考え方もあります。)

 

 

 

ラストのあのお遊びも愛嬌ありましたね。ああいう洒落は大歓迎です。

 

 

惜しむらくは1点だけ、あのノ先生の娘ジヨンだけはちょっと、、、あの芸達者陣の中では役不足感が否めず、、、

赤髪ロングに派手なスーツでエキセントリックさを演出していたんでしょうが、あれだったら金髪ショートとかでゴリゴリアクション出来る中性的な女優さんを配置した方が映えるのではと思いました。(ノ先生クラスなら絶対ボディーガードいなきゃダメだし)

 

 

エンドロールで「必ず戻ってきます」との文言がありましたが、続編どうだろうな~、、、めっちゃ観たいけど、こんだけ時間経っちゃったし、マブリー多分超忙しいし、、

 

 

もし!もし、続編が制作されるなら、今度は出所したジョンドとソンイルが詐欺防止チームを組み、これまでのスキルとメソッドを武器に極悪詐欺集団をぶちのめしていくという展開はどうでしょう?!(映画でもいいよ!!)

 

 

 

何はともあれ、最高に幸せな時間を過ごしました!!

鑑賞後、私に詐欺は出来ませんがああいうクソ野郎を倒すために選挙権をバキバキに行使していこうと心を新たにした次第!!!

胸を張っておすすめできる作品です!!!!